住野よる作『君の膵臓をたべたい』感想 僕はやはり恋愛小説を読むのには向いていない。恋愛というと語弊があるか。人間関係を特にクローズアップさせた作品を読むのには向いていない。SF的なガジェットやミステリ的な仕掛けで中和されていたり、そんな主題が読み取れる、くらいだとちょうどよく読めるのだが、まっすぐに真摯に伝えられると、僕のキャパをオーバーしてしまう。伝えたいことが明確で、それがまっすぐ文章に乗っているから、少しひねくれた(と思いたい)僕は耐えられないんだろうなあ(遠い目)。 そんなまっすぐで、とっても力強い小説を友達の薦めで読むことになった。その名も『君の膵臓をたべたい』。以下あらすじ引用。ある日、高校生の僕は病院で1冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは、...2015.08.31 00:57エンタメ青春読書
最果タヒ作『空が分裂する』感想 詩がきらいになったのは、いつからだろう。詩に対して拒否反応を起こす理由もいまはもう闇の中だが、学校や、テレビで見かける詩の多くが説教くさいものばかりであったからのような気がする。道徳の時間とかね。全然関係ないけど、道徳の時間は嫌いだった。 そんな詩のイメージを変えてくれたのは、野村美月作「文学少女シリーズ」の外伝、『’’文学少女’’と恋する挿話集4』に取り上げられていた、タゴール作「百年後」という詩との出会いだった。その詩に触れた時、冗談無しに読んだままの情景が頭の中に広がり、延々と続く草原や、生き生きとした人物動物が頭の中を飛び出しまるで僕がその空間にいるかのように錯覚した。詩にはこんな力があるのかと、驚愕した覚えがある。その詩...2015.08.29 20:07詩読書
平本アキラ作『監獄学園(プリズンスクール)』感想 僕を面白い漫画と出会わせてくれるのは、いつも友達のおかげだ。全て揃えるのにはまあまあお金がかかるということもあり、自分で漫画を買うことのモチベーションが低いが、漫画が嫌いというわけではない。むしろ好き。でも、情報収集の精度が低かったり、アンテナを張っていなかったりと、自分では何が面白いのか判断がつかない。でも、面白い漫画は結構知ってる(と思う)。それは、高校の部室だったり、寮の友達の部屋に、面白い漫画がたくさんあったからだろう。「その本面白いよ」と気軽に貸してくれる友達に囲まれているのはとってもありがたい。 そんな流れで最近読んだのは平本アキラ作『監獄学園(プリズンスクール)』である。ツイッターなどで「ワロタwwww」とか呟いてい...2015.08.27 14:54漫画エンタメ
酉島伝法作『皆勤の徒』感想 圧倒的なものと対峙すると、声が出なくなる。そんな経験は誰しもあるだろう。それは感動であったり、高揚感であったり、もしくは敗北感だったりすることもある。本に限れば、僕はそんな経験が多くある。脳内に広がる世界に、登場人物の強さに圧倒されてしまうのだ。そんな中でも、この『皆勤の徒』はずば抜けて放心してしまった。以下あらすじ引用。高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に’’会社’’は建っていた。異様な有機生命体を素材に商品を手作りする。雇用主である社長は’’人間’’と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上とそれを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、そして日々の勤めは平穏ではない――第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる...2015.08.25 22:46読書SF
ライブ「EGOIST showcase*003 create recreate」感想 アニメ『GUILTY CROWN』のエンディングでEGOISTの歌う「Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜」のフル初めてを聞いたとき、鳥肌が立った。高校の時で、耳が肥えていなかったというのもあるだろうが、その衝撃がこうしてライブへ足繁く通うきっかけとなったことに疑う余地はないだろう。 EGOISTってなんぞや?といいますと、 ryo(supercell)がプロデュースを手掛ける架空のアーティスト、EGOIST。ヴォーカリストは2千人を超える応募者の中から選ばれた17歳の歌姫・chelly。シングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」と「The Everlasting Guilty Crown」は共にオ...2015.08.24 13:17音楽
辻村深月作『鍵のない夢を見る』感想 大学に行くために上京して、そして2年後の成人式。久しぶりに会う小学校の同級生たちは何も変わっていなかった。小学校時代の人間関係を二十歳になっても続けていた。小学校時代のように振る舞い、僕みたいに久しぶりに帰ってきた同級生を小学校時代のように扱った。まるでタイムスリップしたかのような感覚だった。 別に彼ら(彼女ら)を馬鹿にしたり、断罪しようとする気持ちは全くない。しかし、そこにはある種の(僕の感じる)息苦しさがあったのは事実だ。そんな地方特有の(と言ったら語弊があるかもしれない)息苦しさを感じさせたのが辻村深月作『鍵のない夢を見る』だ。以下、あらすじ引用。 どうして私にはこんな男しか寄ってこないのだろう?放火現場で再会したのは合コン...2015.08.20 14:59エンタメ読書
入不二基義著『あるようにあり、なるようになる 運命論の運命』感想 この装丁、めちゃかっこよくないですか!?!?!?!?!? 黒地に白抜きのタイトルというシンプルなデザイン。しかしよく見ると「THE FATE OF FATALISM」ってあるわけです(実際のは画像のようにくっきり見えない)。すっげーカッケーなって。本棚にこの本置いてあったらその本棚、部屋、そしてその部屋の住民までカッコよくなりそうって。。。。カッコよくならない?読むとき触って指紋をベタベタつけるのがもったいないくらい。飾っておきたい、、、 そんなことを思っていたら。2015.08.16 11:57ノンフィクション読書
舞城王太郎作『ビッチマグネット』感想 帰省時の読書は格別である。鈍行で5時間から長い時は6時間かけて帰るその旅路のお供は、やはり読書だ。読書がしたいがために時間のかかる鈍行での帰省を選択しているといっても過言ではない。また、電車の中での読書は僕の中で強く印象に残るものが多い。例えば、塩尻駅で受けた法条遥作『リライト』の衝撃、小淵沢駅で人間関係についていろいろ考えさせられた最果タヒ作『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』など、忘れられない体験になりがちである。上京の時ではなく、帰省の時しか印象に残る読書がないのはなぜなのだろう。よくわからない。そして、今回の帰省でも印象に残る読書ができた。それが舞城王太郎作『ビッチマグネット』である。以下、あらすじ引用。...2015.08.13 01:19純文学読書
似鳥鶏作『理由あって冬に出る』感想 青春ミステリ。中高のころは大好物だった読み物。辻村深月さんとの出会いの本、『冷たい校舎の時は止まる』もそれの青春の部分が強調された作品だろうし、このミス大賞の山下貴光作『屋上ミサイル』なんかも好きだった。魅力的な登場人物!そして起こる非日常!それを華麗に、鈍くさく解決していくのだ。惹かれないわけがない。それが、大学に入学して何となく避けるようになってしまった。あまりに瑞々しくて。輝いていて(作者はおっさんおばさんだよ、とか、そこ。口を慎む)。直視できなくなってしまったのだろう。のだけれど、久しぶり(約4年ぶり)に手を伸ばしてみました。青春ミステリ。似鳥鶏作『理由あって冬に出る』です。以下、あらすじ引用。芸術棟に、フルートを吹く幽霊...2015.08.10 01:49青春ミステリ読書
江波光則作『我もまたアルカディアにあり』感想 世界の終わり。世界の終わりが来るとしたら?なんか寝てるうちに世界終わってそう。それはそれで幸せなのかも。SEKAI NO OWARIの深瀬君は世界の終わりを最近体験したらしいが、それはちょっと置いておいて。「我々は世界の終末に備えています」と豪語する人物が現れたらどうするだろう?今回の江波光則作『我もまたアルカディアにあり』はそんな感じで始まる。以下あらすじ引用。我々は世界の終末に備えています――そう主張する団体により建造されたアルカディアマンション。そこでは働かずとも生活が保障され、ただ娯楽を消費すればいいと言うが……創作のために体の一部を削ぎ落とした男の旅路「クロージング・タイム」、大気汚染下でバイクに乗りたい男と彼に片思いを...2015.08.09 14:50読書SF
YOUTOPIAを目指して。 近頃、時の進みが異常に早く感じる。もう八月も一週間経ったの!?!?!?的な。それはすごく切ないことで、あの、凝縮された毎日を過ごすことの出来なくなってしまったと思うともう、、、 同じように、表現された作品を読み、見て、聞いて、体験して、そして心が強くゆさぶられる事がとても減った。昔は本を読み終わりしばらく放心状態(頭の中ではその本の登場人物が動き回り、踊り回り)になることがあったが、そんな経験はここ最近、できていない。まあ、これは大人になり、物事を客観視できるようになったことの証左なんだろうけど、なぜだろう、僕はとても寂しいのです。作品世界に没頭し、作品世界から抜け出したはずの現実でもなお、作品世界に影響されていたあの頃にもどれな...2015.08.09 00:29雑感