映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」感想 英雄以後の「オールドタイプ」による革命 延期に延期を重ね、ついに公開になった映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(以下、「閃光のハサウェイ」)。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の陰に追いやられている感も否めなくもないが、心待ちにしていた「ガンダムオタク」も多いだろうと思われる。かく言うぼくもそのうちの1人であるわけですが。初週は溶連菌で死んでいたので2週目に突撃してきた。以下、感想です。 「機動戦士ガンダムUC」は映画「逆襲のシャア」以後を時代設定とし、宇宙世紀(Universal Century)1年のセレモニーにおけるテロを物語の冒頭に据えている点で、宇宙世紀(Universal Century)を総括しようという思惑とともにスタートしたことは想像に難くない...2021.06.24 11:12映画SF
PS4ソフト「ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWN」感想 仮構される人間性空が何色かっての あんたには大事なことかい?あたしにとっちゃ 間違いなくそうなんだ心に目指す空の色 あたしのは・・・・・・ダークブルーだ――「オープニング」より 1年位前に発売されていたゲームの感想、いまさらって感じだけど許してください!(発売と同時にプレイはしていて、けっこう楽しんでました)そもそも、「エース・コンバット7」というゲームは「いまさら」なのだ。正統としてナンバリングがなされたのはなんと12年ぶり。ジャンルとしてはフライトシューティングになるわけだが、その性質上、撃ち落とすべき敵を配置せねばならず、となると、戦争を舞台とするのが常道だろう。 しかし、現在の戦争(果たして現在行われているのは戦争?)では、フライトシューテ...2019.12.09 12:37ゲームSF
宮内悠介『偶然の聖地』感想 あたまでっかちで世間知らずの旅 今、テレビで芸能人の作品を「才能アリ」だとか「才能ナシ」だとか判定している。「才能」……こういうテレビを見ていると「才能」とは相対的なものである気がしてくる。俳句の権威が「この句は良い」と言うから「才能アリ」、生け花の権威が「この生け方はダサい」と言うから「才能ナシ」、権威あるだれかに認められてこそ「才能」なるものは見出される。でもしょうがないのかもしれない、ぼくは「才能」を絶対的なものとして捉えたいけれど(うちの子はやっぱり天才!!、みたいに)、そう信じているぼくだって勝手に他人と比較して自分に「才能ナシ」の烙印を押している。 車の試乗に付き合わせた友人に「お前の運転の練習がてら明日旅行行こうぜ、明日暇?」と誘われた。よっぽど下...2019.05.02 14:31雑感読書SF
宮内悠介作『ヨハネスブルグの天使たち』感想ヨハネスブルグに住む戦災孤児のスティーブとシェリルは、見捨てられた耐久試験場で何年も落下を続ける日本製のホビーロボット・DX9の一体を捕獲しようとするが――泥沼の内戦が続くアフリカの果てで、生き延びる道を模索する少年少女の行く末を描いた表題作、9・11テロの悪夢が甦る「ロワーサイドの幽霊たち」、アフガニスタンを放浪する日本人が”密室殺人”の謎を追う「ジャララバードの兵士たち」など、国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇。才気煥発の新鋭作家による第2短篇集。 誠と璃乃と出会ったのは五歳のときだ。以来二人はいつでも一緒にいた。東京の北のさびれた団地に、学年あ...2017.05.15 02:53読書SF
伊藤計劃作『虐殺器官』感想 ママと赦しを求めて あけましておめでとう!今更!!! 当然のようにネタバレあるのでご注意を。でも、ラストの展開を知ることによってカタルシスが消滅するような小説ではないので、その点はご安心を(何を?)9・11以降の、”テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす”虐殺器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化! 泥に深く穿たれたトラックの轍に、ちいさな女の子が顔を突っ込んでいるのが見えた。...2017.01.27 03:28読書SF
映画「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」感想 衣服/兵器としての”スーツ” 前々から見たいみたいと思ってて、配信方法が限定的すぎてなかなか見れなかった本作。「機動戦士ガンダム サンダーボルト」。いやパソコンなら見れたのだけれどクレジットカードを持たない僕には支払方法がなく、八方塞がりだったんですよね。しかしわが家に降り立った神の機械、「プレイステーション4」。おうちにいながらにして様々な映画、アニメを見ることができるしかもテレビで!さらにBlu-rayディスクも見れるってんだから神様仏様PS4様。ありがとうPS4!ありがてえありがてえ、、、 話が逸れたがこの作品について書いていこうと思う。ガンダムオタクだとしたら、見ておかねばならぬ作品であったと思われます。以下、PVとあらすじ。2016.12.30 08:38アニメ映画音楽SF
高山羽根子作『うどん キツネつきの』感想 藤子・F・不二雄さんの「SF」の定義、すなわち、「少し・不思議」の略だ、っていうのは、とても素敵な定義だと思う。普通の生活に潜む「少し不思議」、僕たちが見落としがちな、目を逸らしがちなその事象を、切り取ることができれば、全部「SF」だろう。そして、その「不思議」は得てして「少し」ではなく「すごく」「不思議」なことである。 そんな「SF(少し/すごく・不思議)」を切り取った作品が『うどん キツネつきの』である。以下、あらすじと冒頭引用になります。犬そっくりの生き物を育てる三人姉妹の人生をユーモラスに描き、第1回創元SF短編賞佳作となった表題作、郊外のぼろアパートで暮らす人々の可笑しな日常「シキ零レイ零 ミドリ荘」、15人姉妹の家が建...2016.11.27 08:49青春読書SF
最果タヒ作『少女ABCDEFGHIJKLMN』感想 詩人の最果タヒさんが書いた中短篇集。たくさんのこの本の感想や、金原瑞人さんの書評(『文藝』2016年秋号収録→こちらからも読めるゾ(web版))にもあるように、非常に詩的。小説なのに。あまりにも詩的。だから、分からない、という感想が多いっぽい。まあ、かくゆう僕も?ばかりだけど、それでも、惹きつけられる魅力がある。 以下、惹句と冒頭に収録されている「きみは透明性」の書き出し引用です。いま、最果タヒにより、文字が、言葉が、物語が躍り出す。 「好き、それだけがすべてです」——最果タヒがすべての少女に贈る、本当に本当の「生」の物語! 姉は、愛に満ちている。やわらかなまつ毛に包まれた頑なな瞳、太陽を頬張ったような頬ももう見えない...2016.08.31 13:37青春読書SF
浅野いにお作『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』感想 「週刊朝日別冊 小説トリッパ― 二〇一六年夏季号」には佐々木敦と東浩紀が主宰する批評再生塾の第1期総代と次席の批評が掲載されている。 総代の吉田雅史は日本語ラップを用いて(「漏出するリアル」)、次席の川喜田陽は漫画を用いて(「擬日常論」)、昭和90年代と昭和の終わりを論じた。 「漏出するリアル」の方は、日本語ラップが自分にとって門外漢過ぎて「そ、そーなのかー」と読んだだけであったが、「擬日常論」の方はかなり面白く読めた。そこで取り上げられている漫画『花と奥たん』と『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』に興味が湧いたので、後者を買ってきました。 以下、あらすじです。大きなUFOが浮かぶ世界は今日も廻る。二人の少女のデスト...2016.07.19 05:39漫画青春読書SF
映画『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』感想 昨日(7/9)公開、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(以下『Ⅱ』)を見てきました。1996年公開の『インデペンデンス・デイ』(以下『Ⅰ』)を金曜ロードショーか、土曜プレミアムか地上波で見て、幼心に興奮したことを覚えていまして、その続きってたら見るしかない! 人類が恐るべき侵略者を撃退し、宇宙における独立を高らかに宣言した記念すべき日から20年。きっと奴らはまたやってくる。その来たる時に備え、地球防衛システムを構築した人類の備えは完璧のはずだった。しかし再び襲来した侵略者は、はるかに想像を超える巨大化と進化を遂げていた……!空前のディザスター映像で大反響を呼んだメガヒット作『インデペンデンス・デイ』の新章が、別次元のスペク...2016.07.11 05:42映画SF
小川一水作『天冥の標Ⅱ 救世群』感想 小川一水がやりたいこと全て詰め込んだ作品の第二弾。 すべてのはじまり。ネタバレがあります。西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく――すべての発端を描くシリーズ第2巻。 煙霧の霊(ガイマー)がどう思っているのか、気になった。 なぜなら今、ニハイの村には、煙霧の霊とジョプの二人しかいないからだ。 煙霧の霊は万物を覆う精霊だ。...2016.05.23 05:23読書SF