木下龍也・岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』感想 特別な一週間(7/1~7/7)が終わり、二人の男子高校生はもういない。でも、えてして振り返って思い出すのは、特別な日が終わった後のことである。だから、7日の次の日の今日7/8に、歌集『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』の感想をまとめておきたい。木下龍也×岡野大嗣 最注目の新世代歌人、初の共著 男子高校生ふたりの七日間を ふたりの歌人が短歌で描く物語 217首のミステリー 木下と岡野は同じ時期に歌を詠み始め、山口と大阪という離れた場所にありながら当初から互いを意識し、影響を受け、高めあってきました。第1歌集が共に4刷をこえるなど、新世代最注目の若手歌人です。 本書では、そのふたりがそれぞれ男子高校生に...2018.07.08 05:31詩青春ミステリ読書
舞城王太郎作『ディスコ探偵水曜日』感想 愛の神話 「『この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる?』」。迷子専門の米国人探偵ディスコ・ウェンズデイは、東京調布市で、六歳の山岸梢と暮らしている。ある日、彼の眼前で、梢の体に十七歳の少女が<侵入>。人類史上最大の事件の扉が開いた。魂泥棒、悪を体現する黒い鳥の男、円柱状の奇妙な館に集いし名探偵たちの連続死――。「お前が災厄の中心なんだよ」。ジャスト・ファクツ! 真実だけを追い求め、三千世界を駆けめぐれ、ディスコ!! 今とここで表す現在地点がどこでもない場所になる英語の国で生まれた俺はディスコ水曜日。Disとcoが並んだファーストネームもどうかと思うがウェンズデイのyが三つ重なるせいで友達がみんなカウボーイの「イ...2017.02.15 17:32純文学ミステリ読書
十市社作『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』感想 Twitterで大森望さんが大絶賛していた本作。手に取ってみた。以下、あらすじと冒頭引用。高校入学七ヶ月目のある日。些細な失敗のためクラスメイトから疎外され、”幽霊”と呼ばれているぼくは、席替えで初めて存在を意識した同級生にいきなり話しかけられた。「まだ、お礼を言ってもらってない気がする」――やがてぼくらは誰もいない図書室で、言葉を交わすようになる。一方、校舎の周辺では小動物の死骸が続けて発見され……。心を深く揺さぶる青春ミステリの傑作。 ぼくの席は窓際の最後列にある。毎朝、ぼくは始業時間ぎりぎりに後ろの出入り口から一年A組の教室に入り、気配を殺してそっと席に着く。誰とも挨拶を交わさないし、誰一人として僕を振り返らない。黒板の上の...2016.06.29 14:22青春ミステリ読書
乙一ら編『幻夢コレクション メアリー・スーを殺して』感想 この本ほど、異色なアンソロジーはないだろう。何しろ、全て同一人物なのだから!!! 乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎の作品、そして安達寛高の解説が付いた、全て同じ人物による、幾つもの名義を使いこなす著者の贅沢な短篇集なのだ! 以下、惹句と表題作の書き出しだよん。「もうわすれたの? きみが私を殺したんじゃないか」(「メアリー・スーを殺して」より)合わせて全七編の夢幻の世界を、安達寛高氏が全作解説。書下ろしを含む、すべて単行本未収録作品。夢の異空間へと誘う、異色アンソロジー。 メアリー・スーを殺すに至った動機と、その後の数年間について書こうと思う。 私という人間は、好きな作品ができると、どこまでも没入してしまう癖があった。作品のジャ...2016.05.15 14:52エンタメ青春ミステリ読書
宮内悠介作『アメリカ最後の実験』感想 私、宮内悠介さん、大好きなのですよ!(突然の告白)好きな作家さんの新刊はすぐにチェックしなければ。文庫落ちなんて待ってられない!!なので、買ってきました単行本『アメリカ最後の実験』。読み終わったので、書きます。以下あらすじと冒頭引用。ここではないどこか、誰も書いたことがない世界を書きたい――気鋭の作家の新感覚小説!失踪した音楽家の父を捜すため、西海岸の難関音楽学校を受験する脩(シュウ)。そこで遭遇する連鎖殺人――「アメリカ最初の殺人」とは? ピアニストの脩が体感する〈音楽の神秘〉。才能に、理想に、家族に、愛に――傷ついた者たちが荒野の果てで掴むものは――西海岸の風をまとって、音楽が響き渡る……著者新境地のサスペンス長編。&nbs...2016.02.02 00:41音楽ミステリ読書SF
アガサ・クリスティー作『そして誰もいなくなった(原題:And Then There were None)』(青木久惠訳)感想 たぶん、多くの人(本を読まない人にも)に認知されている『そして誰もいなくなった』。そんな本作を恥ずかしながらまだ読んだことがなかったのです。ぴえー!すみません!というわけで読みました。以下あらすじ引用。その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く……そして無気味な動揺の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。 冒頭引用。 ウォーグレイヴ判事は、一等喫煙者の隅の席で葉巻をくゆらせていた。少し前に公職を退いた判事の目は、《タイムズ》紙の政治記事を追っている。 判事は新...2016.01.19 12:53外国文学ミステリ読書
石黒正数作『外天楼』感想 これも借り物。おススメを読みまくる日々。あ、新成人はおめでとうございます。一年が過ぎる速さに気を付けるんだぞ。 以下惹句引用。増改築を繰り返し迷路と化した集合住宅の一室で発見された不可解な死体(「面倒な館」)。人工生命学の科学者が刺殺された現場に残された血文字(「フェアリー殺人事件」)。新任の女刑事が過激でマニアックな推理を繰りひろげるせいで、世界は混乱していくばかり!?奇妙にねじれた笑いと感動に不意打ちされる傑作!! ちょっとネタバレあると思います、注意。伏線の回収が快感を呼ぶタイプの作品なので、読むつもりがあって、未読の場合は感想をあまりじっくり読まない方がよいと思います。問題ないように気を使ってはいますが、一応。無理でした。...2016.01.11 03:08漫画ミステリ読書SF
西尾維新作『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』感想 講談社タイガ、創刊おめでとうございます!ツイッターで名を連ねる作家陣を見た瞬間にこの創刊日、10月20日が楽しみで仕方なくなった。2015.10.23 12:49青春ミステリ読書
似鳥鶏作『理由あって冬に出る』感想 青春ミステリ。中高のころは大好物だった読み物。辻村深月さんとの出会いの本、『冷たい校舎の時は止まる』もそれの青春の部分が強調された作品だろうし、このミス大賞の山下貴光作『屋上ミサイル』なんかも好きだった。魅力的な登場人物!そして起こる非日常!それを華麗に、鈍くさく解決していくのだ。惹かれないわけがない。それが、大学に入学して何となく避けるようになってしまった。あまりに瑞々しくて。輝いていて(作者はおっさんおばさんだよ、とか、そこ。口を慎む)。直視できなくなってしまったのだろう。のだけれど、久しぶり(約4年ぶり)に手を伸ばしてみました。青春ミステリ。似鳥鶏作『理由あって冬に出る』です。以下、あらすじ引用。芸術棟に、フルートを吹く幽霊...2015.08.10 01:49青春ミステリ読書