ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』(高橋啓訳)感想 〈歴史〉を〈物語ること〉の倫理 それは〈ここのいま〉から遠く隔たった地点で起こった。 作戦名は「エンスラポイド(類人猿)作戦」。第二次世界大戦の最中、大英帝国政府とチェコスロバキア駐英亡命政府により計画された、ナチス・ドイツのベーメン・メーレン保護領(チェコ)の統治者ラインハルト・ハイドリヒの暗殺作戦のコードネームである。「死刑執行人」「金髪の野獣」「第三帝国でもっとも危険な男」、ラインハルト・ハイドリヒ。「HHhH」とは「Himmlers Hirn heiβt Heydrich」の頭文字で、日本語訳すると「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」となるそうだ。 悪名高い「ラインハルト作戦」というコードネームからも分かる通り、ラインハルト・ハイドリヒはユダヤ人政...2019.01.19 11:10外国文学純文学読書
ラビンドラナート・タゴール作「いまから百年のちに」(森本達雄編訳『原典でよむ タゴール』より)感想 この記事を読まれる皆様におかれましては、ラビンドラナート・タゴールという詩人をご存知であろうか。2017.02.13 12:24外国文学詩読書
アガサ・クリスティー作『そして誰もいなくなった(原題:And Then There were None)』(青木久惠訳)感想 たぶん、多くの人(本を読まない人にも)に認知されている『そして誰もいなくなった』。そんな本作を恥ずかしながらまだ読んだことがなかったのです。ぴえー!すみません!というわけで読みました。以下あらすじ引用。その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く……そして無気味な動揺の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。 冒頭引用。 ウォーグレイヴ判事は、一等喫煙者の隅の席で葉巻をくゆらせていた。少し前に公職を退いた判事の目は、《タイムズ》紙の政治記事を追っている。 判事は新...2016.01.19 12:53外国文学ミステリ読書
アン・レッキー作『叛逆航路(原題:Ancillary Justice)』(赤尾秀子訳)感想 主要SF文学賞(ヒューゴー賞やネビュラ賞など)に軒並み受賞した本作がついに翻訳され日本で発売!なんと七冠受賞を達成し、あの、ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』を超える快挙であるらしい。すげー!読むしかない!というわけで購入。以下あらすじ引用。はるかな未来。強大な専制国家ラドチは人類宇宙を侵略・併吞して版図を広げていた。其の主力となるのは宇宙艦隊と、艦のAI人格を数千人の肉体に転写して共有する生体兵器”属躰(アンシラリー)”である――。”わたし”は宇宙戦艦のAIだったが、最後の任務で裏切りに遭い、艦も大切な人も失ってしまう。ただ一人の属躰となって生き延びた”わたし”は復讐を誓い、極寒の辺境惑星に降り立つ……。デビュー長編にして...2016.01.17 14:14外国文学読書SF
イーユン・リー作『独りでいるより優しくて Kinder Than Solitude』(篠森ゆりこ訳)感想 ケン・リュウの『紙の動物園』を読んでから、中国系アメリカ人の作品が気になるようになってしまい、書店でぶらぶらしてた時に目についたイーユン・リーという名前に惹かれ、購入した一冊。あと、とても装丁が綺麗。2015.10.23 02:39外国文学純文学青春読書
ケン・リュウ作『紙の動物園』(古沢嘉道編・訳)感想 又吉直樹フィーバーがすさまじい。この本の売れない時代に文芸春秋の(あの文芸春秋の!)本が売れすぎで書店にない、みたいなことはこの先、あるだろうか。もちろん、『火花』のことである。異常であることは間違いない。 そんな又吉直樹さんがテレビ番組「アッコにおまかせ!」でアッコさんにおすすめの本を聞かれて答えた本が、ケン・リュウ作『紙の動物園』である。以下、紹介文引用。ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人...2015.09.26 15:30外国文学読書SF
カズオ・イシグロ作『わたしを離さないで』(土屋政雄訳)感想 思い出とは、常に美化されるものである。現在、僕の暮らしている寮では「寮祭」なる祭が催されているわけだが、まあ、この祭がまったくもって意味不明で、他人に説明のしようがない祭だ。過度のストレスを抱えること必至であり、しかし、その大変さは経験しないとまったく伝わらない。ちなみに、僕は一年生のころ6kg体重が減り、二年生のころは牛丼一口でおなか一杯になるほど胃が縮んでいた。そんな僕が四年生として、下の代の胃を縮めるほどストレスをかけてしまっているのは、やはり、そんな経験の中でもよかったこと、楽しかったことが強調され美化され思い出となっているからではなかろうか。 老害と言われる所以である。 このような構図が気持ち悪いとは思うが、そう簡単に変...2015.09.08 02:56外国文学読書SF