小田雅久仁作『本にだって雄と雌があります』感想 本を読みながら、ぶふっ、と吹いた経験はあるだろうか。しかも、何度も。落語を元にした小説なども読んできたが、ここまでの長篇で、しかもただ、笑わせるだけじゃない、そんな本を、傑作と言います。ははっ、こりゃ傑作だ。 以下、あらすじと冒頭ね。本も結婚します。出産だって、します。小学四年生の夏、土井博は祖父母の住む深井家の屋敷に預けられた。ある晩、博は祖父・與次郎の定めた掟「書物の位置を変えるべからず」を破ってしまう。すると翌朝、信じられない光景が――。長じて一児の父となった博は、亡き祖父の日記から一族の歴史を遡ってゆく。そこに隠されていたのは、時代を超えた〈秘密〉だった。仰天必至の長篇小説! あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌があ...2016.07.23 02:44エンタメ読書
浅野いにお作『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』感想 「週刊朝日別冊 小説トリッパ― 二〇一六年夏季号」には佐々木敦と東浩紀が主宰する批評再生塾の第1期総代と次席の批評が掲載されている。 総代の吉田雅史は日本語ラップを用いて(「漏出するリアル」)、次席の川喜田陽は漫画を用いて(「擬日常論」)、昭和90年代と昭和の終わりを論じた。 「漏出するリアル」の方は、日本語ラップが自分にとって門外漢過ぎて「そ、そーなのかー」と読んだだけであったが、「擬日常論」の方はかなり面白く読めた。そこで取り上げられている漫画『花と奥たん』と『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』に興味が湧いたので、後者を買ってきました。 以下、あらすじです。大きなUFOが浮かぶ世界は今日も廻る。二人の少女のデスト...2016.07.19 05:39漫画青春読書SF
辻村深月作『島はぼくらと』感想 おかえりなさい、辻村深月。瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花。源樹、新の四人の島は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。 本土のフェリー乗り場はいつも、目が痛いほどの銀色だ。 夏はなおさら。 午後四時になっても翳りを見せない太陽が、足下のコンクリートを灼き、その上に、無数の銀色の粒がきらきらと輝いて見える。海に向けて突き出した桟橋の脇にある短い庇の待合所も、下に影ができるのは四時半を過ぎてからだ。それまでは高すぎる日差しのせいで、屋根の影...2016.07.18 16:21青春読書
7月15日 金曜日 未明 果てのない日常が。 終わりのない日常が僕の眼前に広がっている。 その景色は凹凸のない平坦なもの。歩いても、逸れても、いつまでも同じ景色。働き始めてからそんなイメージが脳裏に常にちらつく。 終わりがないことに、自分がこんなに恐怖を絶望を感じていたとは、思いもしなかった。 飲み込まれたら終わりだ、僕が。私が。自分が。 僕はつまらない人間にはなりたくない。普通の人間になどなりたくない。だけれど、僕は敗北してきた。つまり、お前は普通だ、と。お前はつまらないと。事あるごとに突きつけられてきたのも事実。 中3の最後の大会。高1初めてのテスト。教育実習。大学の卒業論文。 そして今。このままでは、顔のない人間になってしまう! 社会は荒波などではな...2016.07.14 17:24雑感
映画『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』感想 昨日(7/9)公開、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(以下『Ⅱ』)を見てきました。1996年公開の『インデペンデンス・デイ』(以下『Ⅰ』)を金曜ロードショーか、土曜プレミアムか地上波で見て、幼心に興奮したことを覚えていまして、その続きってたら見るしかない! 人類が恐るべき侵略者を撃退し、宇宙における独立を高らかに宣言した記念すべき日から20年。きっと奴らはまたやってくる。その来たる時に備え、地球防衛システムを構築した人類の備えは完璧のはずだった。しかし再び襲来した侵略者は、はるかに想像を超える巨大化と進化を遂げていた……!空前のディザスター映像で大反響を呼んだメガヒット作『インデペンデンス・デイ』の新章が、別次元のスペク...2016.07.11 05:42映画SF