最果タヒ作『渦森今日子は宇宙に期待しない。』感想 学生最後の更新は、最果タヒ『渦森今日子は宇宙に期待しない。』。青春ものでお届けします。以下あらすじと冒頭引用、いってみよー。私は、私であること、諦めないでいたい。渦森今日子、17歳。女子高生で、アイスが好きな、宇宙人。最後で「え?」となったかもだけど、私も、私の友達(岬ちゃん、柚子ちゃん)も、そんなことは気にせず、部活動、体育祭、夏合宿、と毎日を突っ走る。でも、なんだろう。楽しいのに、面白いのに、もやもやする。私が女子高生だから?それとも、宇宙人だから?この”痛み”に、答えはあるの――?ポップで可愛い、青春小説の新地平。 簡単に言えばここは宇宙探偵部で、ついでにいうと私は宇宙人です。OK?宇宙人は妄想とかじゃなくて本当に宇宙からき...2016.03.31 13:37エンタメ青春読書
高橋健太郎作『ヘッドフォン・ガール』感想 宮内悠介『アメリカ最後の実験』を読んでから、音楽にまつわる小説を手に取ることが多くなった。本作、『ヘッドフォン・ガール』もその流れから。高橋健太郎氏は本業は音楽評論家であり、小説家ではないらしい。文体や構成に関しては、ちょっと安易かなあと思うところもあったけれど、その、音楽への造詣の深さは本物ですた。以下、あらすじと冒頭引用になります。行方不明になった伯母の家で、カズは近未来の地下鉄車内に飛んでしまう。しかもヘッドフォンで音楽を聴いている女性の身体の中に。目の前の光景は本当の未来なのか?好奇心に駆られて、カズはタイムスリップを繰り返す。伯母の教え子だったヴァイオリン奏者のリキ、ドイツの伝説的ミュージシャン、ジーモンと彼の祖父が遺し...2016.03.27 13:07音楽読書SF
卒えても消えない、僕の東京 東京を離れる。それは、東京での居場所を失うということと同義だ。 実家を中心に高校生まで生活圏内を広げてきた僕にとって、東京への進学は今までと全く違う意味を持っていた。離れてみてそう思う。 父親がいて母親がいる、そんな家族の形を保つ実家は生活の、行動の唯一の拠点であった。まして、東京のような田舎ではないため、夜になれば街も眠る。必ず帰る場所が、そこだった。 大学生になり、上京することになった。東京での拠点。僕の場所。家族の一員としての場所ではなく、僕のためだけの場所。そんな場所ができるようになる。 そこが僕の場所と思えるようになるまでには、多くの辛いことがあったのは、別の話。でも、それがあったからこそ、暮らす寮、通う大学を自分の場所...2016.03.21 14:30雑感
佐藤多佳子作『第二音楽室』感想 学校の音楽室ってところは不思議な場所で、そもそもにおいが違うし、たくさんの楽器があって、学校という日常の中でも非日常を提供してくれる場所だったような気がする。 小学校ではクラブ活動は金管バンドしかなかった。小4から入ることができて、パレードとかできた。一年でやめたけど、続ければよかったかなあ。何でやめたのかは覚えてない。ちなみに担当はチューバでした。 中学校では友達と給食の準備の時間に(給食当番じゃない時に)ピアノを弾きにいった。つたない演奏だけど、「英雄ポロネーズ」、「熱情」の一節とか、「悲愴」とか。うまいうまいって言ってくれたし、音楽室の先生にも褒められた。なんだか秘密の時間と空間を共有しているようで、だから毎日のように音楽室...2016.03.14 18:52音楽青春読書
別れのにおい。 1人の同期がこの寮を卒寮した。僕たちの同期では初めてだ。 思えばたくさんのことがこの寮で起きた。入った1年目は一刻も早く出たいと思っていたものだ。上級生に寮内で遭遇しないためにはどうすればよいのか、頭を捻ることに腐心した。食事の時間だったり、お風呂の時間だったり。そんな苦労が今、寮の同期と「そんな時期があったなあ」と思い出話なっていることが、とても切ない。 たくさんのことを乗り越えてきた。そんじょそこらの大学生とは比べものにならないほど苦労をしてきたと勝手ながら思っている。その苦労を一緒に乗り越えてきた仲間は一生ものだ。じじいになっても盃を酌み交わし、雀卓を囲っている、そんな絵を容易に思い浮かべることができる。 卒寮旅行の草津はバ...2016.03.08 09:33雑感
本谷有希子作「異類婚姻譚」感想 もう、さすがに芥川賞受賞作ぐらい読んでおかないと。そんな思いから『文藝春秋』の今月号(2016年3月号)を買った。2作とも全文掲載されているので非常にお得。選評も全部載ってるしね。と、いうわけで、本谷有希子作「異類婚姻譚」を読みました。感想を綴りたいと思います。以下、あらすじと冒頭引用ですです。「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。」――結婚4年の専業主婦を主人公に、他人同士が一つになる「夫婦」という形式の魔力と違和を、軽妙なユーモアと毒を込めて描く。 ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。 誰に言われたのでもない。偶然、パソコンに溜まった写真を整理していて、ふと、そう思っ...2016.03.05 06:24純文学読書