映画「君の名は。 your name.」感想 入れ替わる場所/出会う場所

 

 見てきた。土曜は出勤日なのだけど、午後からなので、午前中いけんじゃん!?!?!?とか調子乗って見た結果、映画の余韻で仕事に集中できず、しかし、残しておきたかったその余韻は仕事のトラブルに対応していたら胡散霧消していた。返してくれ。


 仕事の前に映画見るの、辞めたいと思います。


 以下、ネタバレが多分にあります。ご注意を。



――「君の名は。」予告2


 新海誠作品と言えば、僕にとっての出会いは「秒速5センチメートル」。大学一年生の時、友達の家に行って、見て、叫びながら悶絶していたら、「お前、もうくんな」と家を出禁にされました。その節はすみませんでした。


 そんな彼が書いた新海誠の「星を追う子ども」の感想ブログがこちら。

 「秒速5センチメートル」では、僕はどうしてもすれ違ってしまう男女関係に(一度はうまくいきそうだったからこそ)悶絶し、その物語にプラスして(まあよく新海誠ワールドといわれる)詩的なモノローグと映像美のトリプルパンチだったわけです。出禁になりました。


 さて、今回「君の名は。」。前作、「言の葉の庭」は見なかったので、新海誠を映画館で見るのは初めてでした。映画館で見てよかった。。。


 男女入れ替わりがテーマということで、僕なんかは『とりかへばや物語』がすぐに想起されるわけですが、劇場パンフレットの「プロダクションノート」によれば、小野小町の和歌、「思ひつつ寝ればや人のみえつらむ夢と知りせばさめざらましを」と『とりかへばや物語』が「君の名は。」のモチーフだぞ☆と書いてあって、ニヤリとしたと同時に、とてもうれしかったです。


 入れ替わりという本来あり得ない超常現象を可能にするのは、特別な場所の存在でしょう。


 『とりかへばや物語』の男女入れ替わりは、男っぽい女がそのまま「元服(男としての成人の儀式)」し、女っぽい男がそのまま「裳着(女としての成人の儀式)」を行われてしまったことにより起こることで、「君の名は。」の男女入れ替わりとは少し毛色が違うけれど、この発想の原点の原点が『とりかへばや物語』だから、この物語の影響は免れ得ません。


 日常生活を送る場所(①)を京都、すぐそばにいるのにすれ違い続ける場所(②)を宇治、入れ替わりが解消する場所(③)を吉野と『とりかへばや物語』の場所設定と仮定すると、(多少無理があるかもしれないが)「君の名は。」では①=東京と糸守、②=時間、③=宮水神社の御神体となるでしょうか。


 『とりかへばや物語』で吉野が入れ替わりという超常現象が起きうる場所として、場所から想起されるイメージの数々を巧妙に利用、さらに中国帰りの未来を占うことのできる人物を配置し、半ば現実世界とは異質な世界を作り上げたように、「君の名は。」では、宮水神社の御神体にて、瀧と三葉の入れ替わりが納得する形で完了する(途中でタイムオーバーで中断されてしまうけれども)場所として、しっかりと構築されていたように感じます。


 宮水神社の御神体の伝承(過去の蓄積)、口噛み酒、自分の半身、彼岸と此岸、黄昏(他そ彼)(カタワレ)時etc...


 だからこそ、二人は時間を超えて、黄昏時のほんの夢のような(実際にはすぐ忘れてしまう夢だったかもしれない)一時を過ごすことができたわけだし、そもそも、タイムスリップができたのも、過去に同じ地(場所)に隕石が落ちていたという蓄積、彗星の降る夜、この世とあの世の曖昧な境界、口噛み酒の摂取による、もしかするとセックスよりも深いつながりを手に入れたからに違いありません。


 そんな、強固な舞台装置があったからこそ、唐突に時間空間をこえて「ムスビ」つけられてしまった、瀧と三葉の2人は出会うことができたのでしょう。


 そして、この2人はさきほどの区分でいう①の場所で再会する、このことに大きな意味があると思うのです。


 日常生活の場所、東京(と糸守)は本来、二人が交差する場所ではありません。三葉が東京へ瀧に会いに行った時も、時間により「お前誰?(変な女)」と言われてしまうし、瀧が三葉に会いに糸守に行った時も同じく町自体が消滅していて、そのことを瀧が認識したとたん、スマホの三葉の痕跡は消え、名前も段々と忘れていってしまう。


 しかし、結末、忘れてしまった夢のような時間に、場所の、境界の効力によって入れ替わりが完全に解消されたことにより、日常生活の場所で人生の交差が可能になった。そこがすごくロマンチックだと思うのです。


 いつか見た夢で(または夢のような体験で)あるとき唐突に交わった、交わることは絶対になかったある人と、僕は人間関係を構築しているのかもしれないし、この先出会うのかもしれない。あえて陳腐な言葉を用意すれば、「運命の人」と、ぼくやきみは夢の中でもうすでに、出会っていて、交差していて、ただひたすらに美しい眺めを一緒に見ているのかもしれない。


 そんな、埋もれた過去や忘れられた夢、記憶によって人と人とが出会い、結ばれていく、この二人だけが特別なんじゃない、君ももしかしたらそうなんだよ、と語りかけてくるこの物語が、素敵すぎてロマンチックすぎて大好きです。

9/10追記

 、、、なんと、上記で引用したブログの主が「君の名は。」についての記事を更新してくださいました!!!!

今後の「新海誠作品ブログ」(?)の方向性に期待です。

 、、、、、、なんとなんと、僕のブログにも言及を!

これが癒着、、、!!!これが互助会、、、!!!

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