今村夏子作『こちらあみ子』感想 ふと、思い出すことがある。 たとえば、カオナシ。 小学校の頃、友達に「面白いから見た方がいいよ!!」と言われ、家族で観に行った「千と千尋の神隠し」。それはそれは本当に怖かった、ダメだった。「大丈夫だ、この車は四駆だからな!」~豚になる両親~夜。体が半透明の「カオナシ」。そこまで見た時、ぼくは耐えられなくなって、親に連れられて映画館の座席を立った。 その日以来、「カオナシ」がぼくの生活に陰を指すようになる。トイレの扉を開けて用を足した。鏡は極力見ないようにした。布団を頭まで被って寝た。暗闇はすぐさま照らした。目をつむるのを極力避けた。 たとえば、自分。 小学校に上がる前、だったと思う。母親に泣きついたことがある。「どうして自分はみる...2017.01.29 07:40純文学読書
伊藤計劃作『虐殺器官』感想 ママと赦しを求めて あけましておめでとう!今更!!! 当然のようにネタバレあるのでご注意を。でも、ラストの展開を知ることによってカタルシスが消滅するような小説ではないので、その点はご安心を(何を?)9・11以降の、”テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす”虐殺器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化! 泥に深く穿たれたトラックの轍に、ちいさな女の子が顔を突っ込んでいるのが見えた。...2017.01.27 03:28読書SF