ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』(高橋啓訳)感想 〈歴史〉を〈物語ること〉の倫理 それは〈ここのいま〉から遠く隔たった地点で起こった。 作戦名は「エンスラポイド(類人猿)作戦」。第二次世界大戦の最中、大英帝国政府とチェコスロバキア駐英亡命政府により計画された、ナチス・ドイツのベーメン・メーレン保護領(チェコ)の統治者ラインハルト・ハイドリヒの暗殺作戦のコードネームである。「死刑執行人」「金髪の野獣」「第三帝国でもっとも危険な男」、ラインハルト・ハイドリヒ。「HHhH」とは「Himmlers Hirn heiβt Heydrich」の頭文字で、日本語訳すると「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」となるそうだ。 悪名高い「ラインハルト作戦」というコードネームからも分かる通り、ラインハルト・ハイドリヒはユダヤ人政...2019.01.19 11:10外国文学純文学読書