長嶋有『三の隣は五号室』感想 部屋と引っ越しと人生と 三月も終わり。「二月は逃げ、三月は去る」とはよく言ったものだ。「春は出会いと別れの季節」っていうけれど、逆じゃないですか?「春は別れと出会いの季節」でしょう!三月の終わりの冬から春になる時に特有のあのにおいが僕は苦手です。おセンチになっちゃう。 とまあ、こんな三月の終わり、春という季節にぴったりな本を読んだ。『三の隣は五号室』です。以下、あらすじと冒頭引用。今はもういない者たちの、一日一日がこんなにもいとしい。 傷心のOLがいた。秘密を抱えた男がいた。 病を得た伴侶が、異国の者が、単身赴任者が、 どら息子が、居候が、苦学生が、ここにいた。 ――そして全員が去った。それぞれの跡形を残して。 変な間取りだと三輪密人はまず...2017.03.20 17:36純文学読書