ボンヴォヤージ(短歌十首)

「献杯!」と掲げたお猪口が音を立て羨む故人を偲ぶ「打ち上げ」


ふんばれる魔法をかけてくれた場所ふんばってゆっくりゆっくり納棺


バックミラー越しの涙がたまる「もうちょっとだけ早く、集まれればね」


びっこひく坊主のカラダがひょこひょこと気になって気になって死にきれない


背骨です、魔法をつかった代償の背骨を二人でつまんでいれて


父のさかづきは震えて「カッコいい」震えるバイクにまたがっている祖父


重箱にありがたそうに色づいて鰻が、鰻が、食べられなかった


母としての母妹としての母姉として娘としての母


聞こえないはずの祖父の声がふいに対談の口調でぼくを襲った


語られた思い出たちがきらめいてはじけてどうか良い船旅を

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